「LET'S GO WORLD HOUSE〜エジプト人アラン」






秋も深まり、管理人もすっかりハウスの生活に慣れてきた。このハウスにはジャンのように長期で滞在している外人の他に2〜3日から数週間の短い間だけ滞在する外人達もいた。夏休みだけ日本に旅行に来ている学生のグループからきちんとしたビジネスマンまで、国籍も職種も様々だった。口こみやJAPAN TIMESのアドでこのハウスを見つけた外人達を池尻大橋の駅へ迎えに行って部屋を案内するのが管理人の仕事のひとつでもあった。

ある日、会社から電話が入り、今エジプト人がそちらに向かったからすぐに駅まで迎えにいってくれ、との事。
エジプト人? エジプト人って何語をしゃべるのですか?と聞きかけたところで電話が切れた。

え〜どうしよう。
まぁ、悩んでいても仕方がないので駅へと急ぐ。

駅にはすでにエジプト人らしき男が立ってあたりをキョロキョロと見回していた。背は私より低く、りっぱなお髭に綺麗な目。きちんとしたスーツを着て、一見とても偉そうなエジプト人だった。

とりあえず「Hello...」と声をかけると、訛はあるが一応英語で返事が戻ってきたので安心した。彼はアランという名で、エジプト大学の教授。なんでも大事な会議があるらしく、今回の滞在は1カ月との事。こんなお偉い先生をあのワールドハウスに滞在させる訳にはいかんだろ〜と思いながら、部屋が埋まればどんな客でもOK〜のオーナーのY氏を恨んだ。

日は暮れはじめていた。私とアランはハウスに到着。ハウスでは好奇心の強いジャンが「ハァ〜イ」と早速のお出迎え。
「汚いところですけど・・」と断って部屋を見せた。アランは難しいような、驚いたような表情で困った様子だったが、慣れない土地で疲れているらしくその日はハウスに泊まる事になった。が、やはり翌朝には荷物をまとめて都内へのホテルへと移ることになった。

そりゃぁそうよねぇ・・・。朝は早くからカランカランと洗濯ババァはうるさいし、部屋は暗くてじとっとしているし、シャワーだって順番待ちだし・・・

次の朝早く、私は気の毒に思って駅まで一緒に見送りに行った。途中色々な話をしている中でアランが数日後に開かれる歓迎パーティで日本語で挨拶をしたいと思っている事。1カ月の間だけの日本語教師を探している事がわかった。

「私でよければお手伝いしましょうか・・・」

アランはちょっと驚いた表情をしたが、すぐに明るい顔をして日本語で「ありがとう」と言って笑った。エジプト人と話したのはその時が初めてだったが、どんな国の人であっても、結局は同じ人間なんだな〜ときらきらと光るアランの目を見て思った。

つまりは人と人、そして心と心の問題よねぇ〜なんて妙に納得して、ちょっぴり満足気な私だったが、やはりまだ青かっか・・・。その後まさかそんな恐い目に会う事になろうとは、思ってもみなかった管理人であった。


(つづく......)










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