「LET'S GO WORLD HOUSE〜エジプト人アラン〜その2」






アランが半蔵門のホテルに移動した後、私は週に3日の約束で日本語教師としてアルバイトをはじめた。

最初のうちはホテルのロビーでレッスンをしていたのだが、ホテルの従業員やお客様の前でのレッスンはアランにとってもはずかしいものだったらしく、私達は場所を移す事にした。

「ヒロミ、僕の部屋でレッスンしよう」

え?部屋ってホテルの部屋よねぇ。いくら何でもそれはヤバイでしょ。

ところがアランは私の返事を待たずにフロントへ行きホテルのマネージャーを呼んだ。そして私をマネージャーに紹介し、自分の大事な日本語の先生だから丁重に扱う事、私が来たらアランに連絡を入れて部屋へ案内する事、とさっさと話を進めてしまったのだ。ホテル側としても長期滞在のアランは特別扱いだったらしくマネージャからは「かしこまりました」と笑顔で返事返ってきた。

「アラン、やはり部屋はまずいと思うよ。」と言ったものの「ヒロミは僕を信用できないというんだね。それは僕が外国人だからかい?」みたいな事を悲しそうな顔で言うものだから私はそこで断れるはずもなくアランの部屋についていく事になってしまった。

アランの部屋はシングルとは言え、広々としていて、ホテルというよりは簡易マンションのような感じだった。大きなベットの横には、何十冊もの分厚い本が重ねてあり、ドアの開いたままのクロゼットには何着もの黒っぽいスーツがかかっていた。

アランは2人分のコーヒーを入れて、窓際の丸いテーブルの上に置いた。そして私達は日本語のレッスンを再開した。

初日はドキドキしたが、とても紳士的なアランはレッスン中もまじめに日本語の練習をしたし、さすが頭がきれるとあって覚えも早く「日本語以外は使わない」という2人の約束もきちんと守って簡単な会話はすらすらと問題なくできるようになってきた。今で言えば、ちょうどあの横綱の曙の話すような日本語のようだったと記憶している。そして私もアランの部屋を訪ねていく事にだんたんと慣れていった。何よりもアランは私の日本語のレッスンをとても気に入ってくれたし、それはその当時日本語教師を目指していた私にとってもとても勉強になるものだった。

そんなある日アランが私にエジプトに来て日本語教師にならないか、と話を持ちかけてきた。エジプト大学内に留学生のための外国語のプログラムがあるらしく、アランはこの日本滞在中にそのための日本語教師を一人探さなければならなかったらしい。アランが見せてくれた分厚い書類にはアランの言う通り、その概要が細かく書かれていた。プログラムの内容の他に、住居と車は大学側が提供してくれるという事や、かなり高額の月給や年収の記載まであった。そして更に年2回長期休暇がとれる事や、その休暇を利用して日本へ帰国する場合はチケットまで準備してくれるという事まで。就職活動中の私にとっては、正直言って魅力的な話だった。

私はその短い時間の中で色々な事を考えた。日本脱出。アメリカ行きの夢。家族やボーイフレンドと離ればなれになってしまうこと。エジプトの気候や治安の事、等々....。

次回までに気持ちを決めておいてほしいと言われた私は、3日間のうちにエジプト行きを決心したのであった。

(つづく....)











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